something more precious
05
一波乱あった朝食を終え、自分の執務室に行く間、クニミツは考え事をしながら歩いていた。今クニミツの頭の中には
リョーマのことばかりだった。
なぜあの少女は自分を敵視するのか―
自分の知らない間に彼女に何かしたのか―
なぜ彼女に睨まなければならないのか―
なぜ、なぜと疑問ばかり浮かんでくる。その疑問を解決するのはあの姫だけだとわかってはいるけれど、クニミツは
考えずにはいられなかった。
なぜ自分はあの姫のことが気になるのだろう―
「クニミツ様。」
自分の考えに没頭していると、突然後ろから声を掛けられた。思っていたよりも考え込んでいたらしく人の気配を感じ
ることができなかったようだ。
「セウフィ国のレイ姫・・・・。」
「私くしの名前、覚えていてくださったのですね。嬉しいですわ。」
名前を呼んだだけでレイは満面の笑みを顔に浮かべた。
「自分の妻になるかもしれない女性の名前ですから。それで、何か御用ですか?」
「はい。クニミツ様、お城を案内していただけませんか?私くしまだこの城のことよくわかりませんの。」
「申し訳ありませんが、今から仕事をしなければならないのです。あなた様にもお世話係がいるのですから、その者
に案内をしてもらってください。」
クニミツがやんわり断るとレイは食い下がってきた。
「嫌ですわ。私くしはあなた様の后候補です。なぜお世話係などという者に案内を頼まなければならないのです?少
しぐらいよろしいでしょう?」
その物言いにクニミツは少し嫌悪感を抱き、この姫はあまり好きなタイプの女性ではないむしろ自分が嫌いとする自
分は姫なのだから偉いのだと思っている女なのだと自分の直感が告げていた。
「一緒に仕事をしている者が待っておりますので。それにこの城の者を悪く言うのはお止めください。」
「仕事はその者たちに任せておけばよろしいではないですか。それに、いずれは私くしの臣下となる者たちです。どう
言おうが私くしの自由ですわ。」
クニミツはレイの言葉に怒りを覚え、冷たく突き放した。
「一緒に仕事をしている者は俺の友人たちです、その者たちを悪く言うことは俺が許さない。あと、俺はあなたを后に
すると言った覚えはない。勝手に我が物顔で話をしたり、この城でそのような振る舞いをするのはやめて頂こう。で
は、失礼する。」
「お、お待ちになって!!申し訳ありません、クニミツ様。今後気をつけますわ。ですから、あと少しだけ私くしとお話し
てください!!私くし、私くし・・・・・。」
クニミツの冷たい言葉に焦ったレイは、必死になってクニミツを止め、そして、背を向けて歩き出そうとしているクニミツ
の背中に抱きついた。
「私くし、あなた様のことが好きなんですっ!!いえ、愛していますっ!!ずっと前にパーティでお見かけして以来ずっ
とお慕いしておりました。あなた様の后候補に選ばれてどれほど嬉しかったかわかりません!!あなた様は私くしの
ことがお嫌いなのですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クニミツ様?」
レイは自分の言葉にクニミツがなにも反応しないのを不思議に思い、そっとクニミツの顔を見上げた。クニミツはある
一点をじっとみつめていた。
「リョーマ姫・・・・・・・。」
「落ち着いた?」
あれからしばらくシュウスケにしがみついてエイジに背中を撫でられて泣いていたリョーマも泣きやみ、シュウスケの
腕の中から顔を上げた。
「うん。ありがとう。」
「ちょっとは楽になったかにゃ?」
「うん。」
泣いたので赤い目をしているリョーマにシュウスケとエイジは笑顔で話した。
「リョーちゃん。僕等は君がなんで泣いていたのか聞かないよ。人にはそれぞれ言えない理由があるからね。だから
安心して。」
「俺たちおちびが嫌がるようなことしないから。だからもっと俺たちを頼ってもいいんだからな。」
2人の言葉にリョーマはビックリして固まっていたが、満面の笑顔でお礼を言った。
「ありがとう、2人とも。」
初めて笑顔を見せてくれたリョーマに、2人は花のような笑顔に一瞬見惚れたあと正気に戻りエイジはリョーマに抱き
ついた。
「おちびー!!かわいすぎだよぉ〜!!」
「うん、本当にかわいい。リョーちゃんには笑顔が1番似合うよ。」
「か、かわいいとか言われたって嬉しくない!!//////」
「だってマジでかわいいんだもん〜。ね〜、フジー。」
「うん。他のみんなにも見せてあげたいね。」
「じゃあ、今から会いに行こう!!行こう!おちび!!」
「えっ?行こうってどこに??」
「俺たちの仲間というか、友達というか。」
「信頼できる人たちだから大丈夫だよ。じゃあ、まず着替えないとね。リョーちゃんの部屋へ行こう。」
「よーし!レッツ・ゴー!!!」
エイジはレッツ・ゴーと言いながら立ち上がり、リョーマの手を引きながら歩きだした。
「え?あっ!ちょ、ちょっと・・・!!」
「ほらほら、おちび。早く歩かないとこけるよ。」
「エイジが腕掴んでるからこけそうなんじゃん!!」
「そうだよ、エイジ。離してあげないと、リョーちゃんこけそうだよ。」
「いいの、いいの。早く行きたいじゃん。・・・・・・っと、おわっ!」
エイジが話している途中でリョーマが急に止まったのでエイジは危うく後ろにこけるとこだったが、そこは持ち前の反
射神経でこけるのは回避できた。
「おちび!!急に止まるなー!!」
「どうしたの?リョーちゃん?」
リョーマは2人の声が聞こえていないかのように一点を見つめ、そして睨んでいた。2人がその視線を辿っていけば、
その先には・・・・・・・・・
「「テヅカ・・・・・・・・・。」」

